
2022.12.02糸柳便り
源泉かけ流しとは?天然温泉との違いやメリット・デメリットも紹介
温泉施設でよく見かける「源泉かけ流し」は、新鮮な温泉を楽しめることで知られています。しかし、そもそも源泉かけ流しの意味を知らない方は多いのではないでしょうか。また、温泉には「源泉100%かけ流し」「源泉かけ流し」「天然温泉」などさまざまな種類があるため、理解しておいて損はありません。
今回は、源泉かけ流しの基礎知識から、天然温泉との違い、メリット・デメリットを詳しく解説します。合わせて知っておきたい温泉の関連用語についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
1.源泉かけ流しとは?源泉とは?
一般社団法人日本温泉協会は、源泉かけ流しについて「新しい源泉を常時浴槽に注ぎ続けてあふれさせる状態」と定義しています。「源泉かけ流し」「源泉完全放流式」などの表記がある場合、あふれたお湯を浴槽に戻す、浴槽内で循環させるなどの再利用は認められていません。
源泉とは、「温泉が地表へ湧出する場所」または「湧出した温泉そのもの」を指します。源泉の湧出形態は、次の3種類に分かれます。
- 自然噴出…地盤の割れ目から自然に源泉が噴出しているもの
- 掘削自噴…地中深くに細長い筒状の機器を差し込む「ボーリング」という方式で、地中の源泉を掘り当て、水圧で自然に噴出させるもの
- 掘削動力揚湯…ボーリング方式で地中深くの源泉を掘り当て、ポンプの力で吸い上げるもの
1-1.「源泉100%かけ流し」と「源泉かけ流し」の違い
「源泉100%かけ流し」と「源泉かけ流し」は、温泉の温度調節の方法によって呼び方が違います。
「源泉かけ流し」は、源泉に対して温度調整のためのわずかな加水や加温、塩素消毒などの方法をとっています。なお、源泉かけ流しでは泉質が変わるほどの加水は認められません。加温については公正取引委員会で認められているものの、加温を行う場合はその理由や状況を明記する必要があります。
一方で、源泉に対して加水、加温、塩素消毒などを行わない温泉は「源泉100%かけ流し」と表記することが可能です。源泉が高温の場合、加水ではなく自然冷却用の貯水槽へ源泉を貯めたり、冷却パイプに源泉を通したりして温度を調整した源泉も源泉100%かけ流しとして利用できます。
1-2.「温泉かけ流し」と「源泉かけ流し」の違い
温泉かけ流しは、新しい温泉水を常時浴槽に注ぎ続けてあふれさせる状態です。加水、加温、塩素消毒などを行わない源泉かけ流しとは違い、「温泉かけ流し」と表記されている場合は源泉への加水や加温が可能です。また、温泉かけ流しでは加水や加温を実施する場合、理由及び状況について明記するよう定められています。
1-3.「天然温泉」と「源泉かけ流し」の違い
「天然温泉」と「源泉かけ流し」の違いは、地中から湧出した温水または鉱水を循環して再利用しているかどうかで見分けることができます。
そもそも、温泉とは次の条件をすべて満たす温水や鉱水などのことです。
- 地中から湧出している
- 採取時の温度が25℃以上、または温泉法で定められている成分含有量の基準値を上回る
「天然温泉」という語句は温泉法には登場しないものの、一般的には温泉法で定められている条件を満たした温泉を天然温泉と呼んでいます。
天然温泉は、温度調整のために加水、加温などを行うこともあります。また、一定の量を保つために、浴槽に新しいお湯を入れながら循環させる循環式の温泉もありますが、この場合も「天然温泉」を謳うことが可能です。
一方で、源泉かけ流しはお湯を循環させず、浴槽に常に新しいお湯を入れるのが条件になります。
2.「源泉かけ流し」の定義は温泉法では定められていない!
温泉法には、源泉かけ流しに関する定義や表示義務についての表記がありません。そのため源泉かけ流しについて自治体や温泉地独自の説明がなされている場合が多く、定義に関して気になっている国民も少なくありません。
出典:独立行政法人国民生活センター「「源泉かけ流し」と表示があるのに湯があふれていない宿泊施設」
入浴施設へ行くと、源泉かけ流しと書かれているにもかかわらず、浴槽からお湯があふれていない場合があります。
一部の入浴施設では、冷えたお湯を浴槽の下へ循環させて底の排水口から捨てているため、源泉かけ流しであっても浴槽からお湯があふれることはありません。また、浴槽の横に湯口がなく浴槽の下から源泉が沸く入浴施設もあります。例外はあるものの、浴槽周辺に湯の花などの温泉成分がたくさん付着している場合や、湯口と浴槽の温度差が大きい場合は源泉かけ流しの可能性が高いでしょう。
2-1.「かけ流し」表記に関する別府市の取り組み例
温泉を好む方の中には、泉質や効能だけでなく、「源泉かけ流しかどうか」を重視する方も少なくありません。全国有数の温泉地として知られる別府市では、誰もが安心して温泉を利用できるよう、市営温泉紹介の中にも情報を掲載しています。
源泉
泉施設の所在地に源泉が存在しているもの。
引湯
温泉施設の所在地とは別の場所に源泉があり、給湯管を通して温泉施設へ温泉を引いているもの。
かけ流し
温泉施設の浴槽等に供給する温泉が『かけ流し』方式のもの。
つまり浴槽等に供給する湯量をコントロールせず源泉からの温泉をそのまま流しているもの。
循環
温泉施設の浴槽に供給する温泉が『循環』方式のもの。つまり浴槽等に供給する湯量をコントロールし、さらに排出された温泉の不純物を取除き、ろ過したものを再利用しているもの。
源泉 かけ流し
温泉施設所在地にある源泉から浴槽へ温泉をそのまま供給しているもの。
引湯 かけ流し
温泉施設所在地とは別の場所にある源泉から給湯管を通して浴槽へ温泉をそのまま供給しているもの。
引湯 循環
温泉施設所在地とは別の場所にある源泉から給湯管を通して浴槽へ温泉を供給しているものの、一部をろ過し再利用しているもの。
3.源泉かけ流しのメリット・デメリット
源泉かけ流しのメリットは、いつでも新鮮な温泉を楽しめることです。源泉の成分が薄まっていないため、温泉本来の成分や色、香り、肌触りなどをダイレクトに感じられます。また、持続的な温熱作用や血管拡張作用をはじめとする温泉ならではの効能を感じやすいのも特徴です。公衆浴場などでは消毒用の塩素臭が気になることもありますが、源泉かけ流しであれば塩素消毒を行っていても臭いはほとんど感じません。
一方で、源泉かけ流しは温度調整が難しく、人によっては快適な温度で入浴を楽しめないケースもあります。また、注がれるお湯の量が少ないと浴槽内に汚れや温泉成分がたまり、衛生的によいとは言い切れません。
源泉かけ流しの温泉を選ぶ際は、メリット・デメリットを踏まえた上でどのように楽しみたいかを考えながら選ぶとよいでしょう。
4.源泉かけ流しと合わせて知っておきたい!関連用語
自分に合った温泉を探すためには、源泉かけ流しかどうかだけではなく、泉質にもこだわるとよいでしょう。温泉の泉質は、単純温泉や塩化物泉をはじめとする10種類に分類されており、それぞれ異なる効能を持っています。
さらに、さまざまな温泉用語に関する知識をつけておくことで温泉の特徴をつかみやすくなります。
4-1.加温
加温とは、事業者が低温の源泉をボイラーや熱交換器などで加熱したり、源泉に温水や熱水を加えたりしてから浴槽へ注湯することです。また、循環式や循環濾過式の場合は湯温を保つための加温が欠かせません。かけ流しかどうかにかかわらず、加温を行っている場合はその旨と理由を明記する必要があります。
4-2.加水
加水とは、事業者が源泉に水道水、井戸水、湧き水、海水、川や湖の水などを加えてから浴槽へ注湯することです。多くの場合、加水は次のような目的で行われます。
- 湧出温度の高い源泉を冷水で冷やす
- 湧出温度の低い源泉を温水で温める
- 湧出量の少ない源泉を増量する
- 含有成分が多く身体への刺激が強すぎる源泉を希釈する
加温と同じく、加水を行っている場合もその旨と理由を明記するよう義務付けられています。
4-3.循環式・循環濾過式
循環式とは、浴槽のお湯をポンプなどで浴槽の外へくみ出したのちに、浴槽へ戻して再利用する方式です。くみ出したお湯の汚れを濾過器などで取り除いている場合は、循環濾過式と呼ばれます。また、循環式や循環濾過式では浴槽の湯量を保つために、新しいお湯を加えることも少なくありません。加えるお湯に温泉を使う必要はないものの、その場合は温泉以外のお湯を加えている旨を明記する必要があります。
基本的に、循環式や循環濾過式はかけ流しと反対の特徴を持っています。湯温のムラが少ないために大きな浴槽でも適温を保ちやすい上、温泉成分やゴミがたまりにくいこともメリットです。
まとめ
源泉かけ流しと天然温泉の違いが分かれば、温泉をより楽しむことができます。また、源泉かけ流しにはメリット・デメリットがあるため、必ずしも「源泉100%かけ流し」がよいとも言い切れません。源泉かけ流しの温泉をお探しの方は、ぜひ当記事で紹介したメリット・デメリットを参考にしてみてください。
源泉かけ流しは明確な定義が定められておらず、詳細は自治体や温泉地によって異なります。現地の源泉かけ流しの内容を深く知りたい方は、各自治体や温泉地の情報をチェックしましょう。
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